不妊College -データに基づく不妊治療の基礎知識―
監修:国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 副センター長 齊藤英和 先生
「子どもを持ちたい」と思いつつ、なかなか妊娠しないカップルは、7組に1組といわれています。日本では、2015年1年間で、高度な不妊治療(体外受精に代表される生殖補助医療(ART)のこと)といわれる技術が のべ420,000回近く行われ、50,000名以上の赤ちゃんが誕生しました。
このサイト「不妊College(不妊カレッジ)」は、生殖器の構成、不妊症の原因、検査、治療法などを掲載しています。不妊治療において理解できないことや疑問を感じてしまうことがあると不安やストレスにつながる可能性がありますが、より多くの知識を得ることでこれらは軽減すると考えています。そのため、このサイトでは一般の方には難しい専門情報も掲載しています。不妊治療を行っているクリニックなどが運営するわかりやすいサイトから不妊症の知識を得ていただいた上、もう少し詳しい情報が必要になりましたらご利用ください。
不妊症にならないために
不妊症の原因はさまざまですが、日常生活などに問題があり妊娠しにくくなっている女性は多く、不妊症になりにくい生活習慣(禁煙、食生活の改善、ストレスを受けにくい生活など)を身につけることが重要です。しかしながら、もっとも重要なのは「年齢」であり、一般的に20歳台後半より徐々に妊娠しにくくなり35歳を過ぎるとさらに急激に妊娠しにくくなり、40歳を過ぎると出産率はかなり減少します。
欲しい子どもの数と妊活の開始年齢を検討した海外の報告(以下、表)では、「ほぼ確実(90%程度希望が叶う)に子ども1人は欲しい」と希望する女性は、妊活は遅くとも32歳で開始した方がよいとされています。もし子ども2人を望む場合には、遅くとも27歳からの妊活が必要です。この年齢は自然に妊娠する場合を想定していますが、病院やクリニックを受診し体外受精や顕微授精のような高度な生殖補助医療(ART)を受けた場合においては、上記と同様の希望条件下での妊活(受診)開始年齢は遅くとも35歳、31歳となります。これらの年齢を超えると、妊娠の確率は下がっていきます。妊娠可能な年齢を知った上で生活設計を立てていただくことが重要です。
欲しい子どもの数と女性が妊活を開始すべき最終年齢
欲しい子どもの数 | |||
---|---|---|---|
子ども1人 | 子ども2人 | ||
自然に妊娠したい場合 | 達成確率50% (希望通りかもしれないし無理かもしれない) |
41歳 | 38歳 |
達成確率90% (ほぼ希望通り) |
32歳 | 27歳 | |
病院/クリニックを受診し生殖補助医療(ART)を受けた場合 | 達成確率50% (希望通りかもしれないし無理かもしれない) |
42歳 | 39歳 |
達成確率90% (ほぼ希望通り) |
35歳 | 31歳 |
HabbemanJD:Hum Reprod 2015:30(9),2215-2221より抜粋
妊活を始めた段階、病院を受診した段階ですでにこの年齢を超えている方もいらっしゃるかもしれません。不妊治療(生殖医療)はめざましい進歩がみられており、35歳以上の高齢の方でも妊娠できる確率は高くなってきています。妊娠できるのだろうかと不安な気持ちで治療するのではなく、不妊症に関する知識を深め、必ず赤ちゃんが授かるだろうと信じて積極的に治療に取り組みましょう。
まずは、妊娠につながるよう生活習慣を見直しましょう。
目次
2. 不妊症を理解する
- 1) 不妊症の定義
- 2) 不妊症の頻度
- 3) 不妊症の原因
- 4) 不妊症の分類と不妊因子
3. 不妊症を診断する
- 1) 不妊検査の種類
- 2) 月経周期に合わせた検査
- 3) 排卵時期を予測する検査
- 4) その他の検査
- 5) 精密検査
4. 不妊症を治療する
- 1) 不妊改善につながる生活習慣
- 2) 治療の成功率と年齢
- 3) 治療の流れ
- 4) ステップ1:タイミング療法
- 5) ステップ2:人工授精
- 6) ステップ3:体外受精
- 7) ステップ4:顕微授精
- 8) くすり
5. 男性不妊
- 1) 男性の生殖器の構成
- 2) 男性不妊症の原因
- 3) 男性不妊症を診断する
- 4) 男性不妊症を治療する
6. 用語解説
- 1) 胚の質
- 2) AMH
- 3) タイムラプス
- 4) 医療費控除、助成制度