ベッキー・カーンズ(Becky Kearns)

「自然妊娠は望めないでしょう」と告げられるのは、とてもつらいことです。
「子どもを授かることはないでしょう」と告げられるのは、誰にとっても本当につらいことだと思います。
「子どもを授かることはできますが、あなたとは血のつながらないお子さんになります」と告げられるのは、非常に複雑で気持ちの整理に時間がかかります。
私は、不妊治療に取り組む中でそうした瞬間に直面し、精神的にそれぞれ違った苦しみを経験しました。
私はまだ28歳のときに早期卵巣機能不全であることがわかりました。年齢のせいで、かかりつけ医の理解や関心を得られず、自己診断しました。その後、自分の卵子を使って体外受精を5回行いましたが流産してしまったため、自分と血のつながった子どもを持つことをあきらめるという苦渋の決断をして、ドナーから卵子提供を受けることにしました。嬉しいことに、この決断によって私たちの人生は好転し、今は3人のかわいい娘たちの母親になることができました。この子たちの母親になれたことを誇りに思っています。
卵子提供を受けるという選択肢は、私の不妊問題を解決し、私たちが生物学的な形で家族を築くことができる選択肢として提示されました。ですが、人として不妊の問題や自分の遺伝子を残せないということが私個人に与える感情面での影響については、十分にわかってもらえていないと感じました。
私は自分が1人ぼっちのような気がして困惑し、自己流のやり方で相対する感情と折り合いをつけていきました。その一方で、治療について現実的な決断をしようとしましたが、自分が共感できる話や感情面での支援はほとんど見当たりませんでした。
これは単純な決断ではなく、その場限りの決断でもありません。いろいろな感情がともない、慎重に検討する必要がある決断です。子どもを授かって終わりではなく、そこから新たな物語が始まっていくのですから。私は今、子どもを授かるためのこうした取り組みを行っていく際には支援が不可欠であるということ、また、ドナーから卵子や精子の提供を受けて家族を築くというのは単なる医療処置をはるかに超えたものであるということを実感しています。
振り返ってみると、自分が当時いかに孤独な気持ちであったかがよくわかります。私が「ディファイニング・マム(DefiningMum)」を創設し、自分の話を共有することにしたのは、そうした経験によるものです。私は、皆さんが私たちの体験に希望を見出し、こうした道のりを経て大きな愛と喜びに出会えることを知ってもらえればと思っています。同時に、その過程で心配や不安や孤独を感じるのは自分だけではないということ、あなたは1人ではないということを知ってほしいと思っています。
この2年間、「ディファイニング・マム」が大きくなっていく中で、当時知っていれば・・・と思うことがたくさんあることにも気がつきました。そこで、人とつながり、情報や支援を得ることができるプラットフォームとして、「パス・ツー・ペアレントハブ(Paths To Parenthub)」を設立しました。
私のもとには、不妊治療の過程で悲嘆と希望という複雑な感情を同時に抱え、孤独な気持ちになり、どうしてよいかわからないという方から毎日のように連絡があります。共通のテーマとしては、自分の遺伝子を残せないという悲しみ、「本当の」親のように感じられるかという心配、愛情やきずなを感じられるかという不安、子どもが将来どう感じるかという気がかり、そして周りの人がどう思うかという心配などがあり、いずれもきちんと対処し、感情面での支援を受ける必要があります。未来の親として、私たちは自分の悲しみを自覚して気持ちを整理し、子どもたちに対する影響を把握し、子どもたちに誇りを持って正直に自分がどのように生まれてきたかを話せるようにし、子どもたちがそうした話を受け止める手助けをできるようにするための手段を持つことが大切です。
ドナーから卵子や精子の提供を受けるというのは、単に医療上必要なことではなく、とても感情的な決断であるということを、世界中の医療専門家の方々に認識していただきたいと思います。
そして、この道のりを歩む方々に、あなたは1人ではないということを知ってもらいたいと思います。
子どもを授かる道のりは人それぞれであり、不妊治療や、ドナーから卵子や精子の提供を受けて妊娠することに関する社会的なタブーを打ち破っていきたいです。